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現地スタッフをマネジメントする。日本人駐在員にリーダーシップが宿った。

2022.10.12

現地スタッフをマネジメントする。日本人駐在員にリーダーシップが宿った。

自動車

東南アジアにあるL社のR&Dセンターは、アジアグローバル戦略の中心的役割を担っている。アジアマーケットの急成長を背景に、年々スケールが拡大し、ローカルスタッフ、日本人駐在員の数も急増している。伝播伝承を支えに、これまで日本の自動車産業を牽引してきたL社の成長軸をいかにローカルスタッフに引き継ぐか、その人材の早期育成が重要課題であった。意識を持った人材にゆくゆくは組織運営までも移行したい。その鍵となるのは先ず、日本人駐在員の意識改革であった。

もどかしい現実。

日本人駐在員のほとんどはエンジニア。彼らにローカルスタッフに対するマネジメントが求められた。彼らとて必要性は理解している。しかし、ただでさえ仕事量が多く多忙な彼らは、エンジニアとしての本来の仕事以外にモチベーションが保てない。そもそもマネージャー職でない彼らは、マネジメントの経験も知識もない。言葉の壁もある。双方が母国語ではない英語でのコミュニケーションは、それだけでストレスが溜まる。文化も違う。自主自立を標榜するL社ではチャレンジを尊ぶ社風がある。一方、敬虔な仏教徒が多いローカルスタッフは、指示のないことに手を出すのは不徳とされる。本社の思いとは裏腹に、たくさんのもどかしい現実があった。リアルなダイバーシティだ。

揺れ動く気持ち。

事前に行われたローカル人材へのインタビューからは、L社で働くことに強い誇りが垣間見られた。一方で業務アサイン力が弱く、組織の一体感が薄れつつあることもわかった。日本人駐在員たちは確かにマネージャー職ではない。しかし、現実は彼らがマネジメントをしないことで、すでに大きな問題が顕在化しつつあった。「わかってはいるけど、なぜ自分が?」。会社から求められたにすぎない役割意識を、自分の意志にまで昇華できるか。2018年8月。25人の日本人駐在員が集められ、マネジメント力強化に向けたワークショップがスタートした。

体験から組織課題を学ぶ。

頭でわかっていても腹に落ちない。腹に落ちなければ何も変わらない。実は組織のほとんどの問題の原因はそこにある。全員で役割分担をし、作戦を練ってタイムアタックをするアクティビティでのこと。最初はどのチームも15分以上かかった。もっと早く完成させてほしい、できることは何か。目標を共有する。互いに声かけ、サポートする。飛躍的に練度が高まる。5分、1分、最後はなんと10秒でできた。これぞイノベーションだ。拍手が起こった。「仕事も一緒だよな」。誰かの言葉でハッと気がついた。今しがた体験した最高のパフォーマンスと現状の仕事を鑑みる。無理だと決めつけていただけではないのか。できることはまだまだある。よし!

現実を超えていく。

最終日のアクションプランとリーダーシップ宣言。ローカルスタッフが話しかけられる雰囲気を作ろう。彼らが少しずつ小さなチャレンジができる環境を用意しよう。一人ひとりとキャリア目標を共有しよう。僕らの期待を伝えよう。職場に戻ったら明日からできることが次々と見つかった。日本人駐在員同士が一枚岩になった。ローカルスタッフとの絆も深まりつつある。仕事の量も、拙い英語も、もどかしい現実は何も変わらない。変わったのはエンジニアたちの物の見方、パラダイムだけ。それだけで組織が変わった。