リード・ザ・セルフ(Lead the Self)への道筋
私たちが「Reignite(再着火)」の第二フェーズとして位置づけているのが、「自己の探求」です。これは、私たちが「リード・ザ・セルフ(Lead the Self)」と呼ぶパートでもあります。
「自分とは何者か」を問い直すプロセス
この段階において問われるのは、自分自身の価値観の再発見です。
長年企業で働いてきたシニア社員の多くは、会社や社会の期待に応えながらキャリアを積み重ねてきました。ところが、「自分は何を大切にしてきたのか」「どんな価値観を軸に働いてきたのか」と改めて問われると、言葉にできないまま戸惑う方も少なくありません。
それは、そもそも自己承認が不足している状態では、自己を探求する余裕が持てないからです。
「自分には関心を持つに値する何かがあるのか?」――そう感じていない状態で、自らの価値観を見つめ直すことは極めて困難です。
暗黙知を言語化する「人的資本の棚卸」
加えて、もう一つ重要な観点があります。それは、長年培ってきた経験や知見が、どのような形で「価値「に変わるのかを、本人自身が理解できていないケースが多いということです。
たとえば、「法人営業を20年やってきた」「スーパーバイザーとして30年現場を見てきた」。こうした職歴は事実として存在します。しかし、その裏にある「自分ならではの強み」「転用可能なナレッジ」―いわば個人の中に眠る暗黙知を、言語化・構造化できている方は決して多くありません。
人事データベースやキャリア面談で共有されるのは、あくまで「経歴」であって、本質的な人的資本の中身=潜在的な価値までは捉えきれていないのが実態です。
私たちはこのプロセスを「自己の棚卸」と呼び、特にシニア層にこそ必要だと考えています。

シニア人材の「自走」を支える土台
多くの企業では、経営人材の育成や若手ハイポテンシャル層の開発に力を注いでいます。これらの層は、「会社の未来を担う存在」として、比較的直線的かつ明確な開発目標を持つことができます。
しかし一方で、シニア層はどうか――。
彼らに必要なのは、「会社のために」という他律的なモチベーションではなく、「自分自身のために、もう一度自らのキャリアを動かす」という内発的な動機なのです。
そのためにはまず、前段の「自己承認」があり、そこからようやく「自己の探求」が始まります。
「自分が本当に大切にしているものは何か」
「自分はこれから、どんな価値を社会に届けたいのか」
この問いと向き合うことこそが、シニア層が自らの意志でキャリアのドアを再び開いていく鍵になると、私たちは考えています。