JA

/

EN
JA

/

EN

「シニア社員のセカンドキャリア」を考える共創ミーティングレポート

2025.04.28

「シニア社員のセカンドキャリア」を考える共創ミーティングレポート
Part I:自己承認

再着火のはじまりは「自分を認めること」

私たちが提案したいと考えている「Reignite(再着火)」の第一フェーズは、自己承認と自己認知の回復です。

キャリアの再構築やセカンドライフの設計という話になると、多くの場合「制度的なキャリア支援」や「退職後の生活設計」といったテーマに寄ってしまいます。しかし本質的にはその前段階として、まずは本人自身が「自分がここに存在していていい」「まだ誰かの役に立てる」という自己承認を持てるかどうかが極めて重要だと、私たちは考えています。

とくにシニア層に近づくほど、「本当はここに自分がいていいのか…」と感じながら、どこか肩身の狭い思いをしている人も少なくありません。会社の中で形式的に行われるキャリア面談だけでは、なかなか本音に届かない。だからこそ、外部の中立的な環境で「他者の視点「を通して自己を見つめ直す体験が必要なのです。

そのために私たちが注目しているのが、「動物との共生」を通じた体験型セッションです。

馬との出会いが人を動かす 「ホースパーク」の取り組み

たとえば、私たちが能登で行っている取り組みに「ホースパーク」があります。ここでは、かつて競走馬として育てられたサラブレッドたちとともに時間を過ごします。

ご存じの方も多いかと思いますが、競走馬は年間約8,000頭が生まれ、そのうち3年以内に1勝もできない5,000頭以上が処分されてしまうという現実があります。こうした競走馬たちの「セカンドライフ」を支えるべく、著名な調教師の方が立ち上げたのがこの施設です。

能登の地は、地震や災害などにより多くの高齢者が孤立感や寂しさを抱えて暮らしています。そこに、役割を終えた馬たちがそっと寄り添い、癒しとつながりをもたらしているのです。

馬の世話をしたり、触れ合ったり、一緒に散歩をしたり、乗馬体験を通して、「自分が誰かに優しくしている」「誰かに受け入れられている」と感じる。これは単なる癒しではありません。動物を大切にするという行為が、いつしか「自分自身を大切にする」感覚へとつながっていくのです。

私たちはこの感覚を「アニマルウェルフェアの擬似体験」と呼んでいます。

五感を通じて得られる安心、信頼、共感といった感覚が、自己承認のきっかけになる――それが、Reigniteの第一ステップです。

「優しさ」の奥にある、本当の気づき

こうしたセッションの話をすると、「なんだか優しそうで癒し系ですね」と言われることもあります。ですが、実際にはもっと深いプロセスが求められます。

動物との触れ合いを通じて、自分が何に不自由を感じ、何に閉じているのかに気づく。これは、意外と簡単なようで難しい作業です。

しかし、それに真正面から向き合うことで、人は「自分にもまだできることがある」と思い出すきっかけを得ます。

NPOやボランティア活動だけでは成り立ちづらいこのような取り組みを、私たちは企業と連携しながら、ひとり一人が「自分の現在地」を見つめ直す場として形にしていきたいと考えています。これが、「Reignite」第一フェーズ 、 自己承認のステージです。

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11