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組織開発にまつわるお話
上村コラム~コンサルタントの現場から~
続・人材開発の現場で、潮目が変わり始めている。
「学びの場としての日常の職場をどうリデザインするか」
組織開発コンサルタント 上 村 健 作
■どの業界でも若手社員は「自律型人材」
先日、「若手社員に自社の中長期の成長を担ってもらいたいと考えている」とおっしゃるホスピタル・サービスの 別々の業界、立場でありながら、お二人から共通して出てきた言葉が、今ブームとも言える「自律型人材」。
「若 手社員には自律型人材になってもらいたいんです。だけど、なかなか難しくて…。言われたことやルールは守れる のですが、自ら働きかけることは絶対にしない んですよね。指示待ちというか。主体性に欠けるというかマインドが弱い というか…他社はどういう教育をしているのでしょうか?」
私は「若手社員の教育はとても重要ですが、一度階層にこだわらず、人が育つ組織について、考えてみたほうが良いですよ」。と応えました。
こう応えた理由は幾つかあります。
■答えのない上司と個人がバラバラに働く職場
かつてのプレイヤーだった上司たちから、知識やダイレクトな答えを出すことは難しくなりました。こうした現実のなかで、 経営層は、特に上司のうちミドル層への期待として、「成果を出すこと」、「現場でのビジネスのタネを見つけ、新規事業に 育てるアイデアを上げること」、そして「人を育てること」を挙げています。一方のミドル自身はプレイングマネージャーと して数字に追われ、「人を育てる暇はない…」という日々です。

もう一方で、組織構造と人事制度の悪影響も見えてきました。

意思決定の迅速化を目的として、 組織のフラット化を進めた結果、成果指標による目標管理制度の運用も重なり、個人が自身 の目標達成のみに関心を持つようになり、「忙しい…」ことを理由として、隣の同僚がどんな仕事をしているかわからないと いう職場がますます増大しています。

答えを持たない上司と個人がバラバラに働く職場。こうしたなかで、若手社員の自律型人材が求められるのはある意味、「必然」 と思われます。わかりやすく言えば、「若手の皆さん、誰も教えられないので、勝手に育ってください」という逃げのメッセージ が見え隠れします。
■本当は自律型人材とは「高度なビジネス人」
自律型人材の育成の前に、その人材像を定義をしてみると、一般的に言われる自律型人材とは、自分で考え、自分で行動し、 PDCAをきちんと回せる人などと言われます。

これを実際の場面でイメージしてみた場合、

例えば…ある組織でプロジェクトを任されている人がいたとします。自分たちのプロジェクトの「役割・動き方」について、 ある出来事によって変化が必要になる のではと強く、「自分自身」が感じた。そのため、自分たちチームの動きの変化について、 周囲に情報し収集し、上司に相談に行き、その方向性について確認す る。必要ならリソースサポートをお願いする…。

こうした動きをとれる人材を自律型人材とした場合、この行動を分析していくと、
①常に日頃か ら情報収集するアンテナを持っている ②状況の変化が自分たちプロジェクトの組織にもたらすインパクトと、それに関連した自分たちチームの仕事への 影響を客 観的に見る視点を持っている。 ③自分自身のレイヤーだけではなく、上司のレイヤーの視野を併せ持っているため、上司とすり合わせる必要が あることがわかり、相談に行ける。 ④先の変化と現在のギャップを理解しているため、最低限必要なリソース要求ができる…と、 わりと高度なビジネス行動であることに気付きます。

さらに、この①~④の行動を下支えしているのが、「基礎力」と言えます。情報をとるために必要な 「人的ネットワーク力」、コミュニケーションに必要な「傾聴力」etc 多くの基礎力の上に行動が具現化され、 自律的行動が実践されているのです。
■若手社員の自律性が見えない本当の理由
こう考えると、若手社員に自律的な行動が見えないという現象の裏側に、私はこの「基礎力」を持ち合わせていない・ 学べていないため、本人たちのマインドがあるなしに関わらず、周囲が期待するような主体的な行動ができないという 側面もあるのではないかと思っています。

例 えば…仕事が遅い、自分で優先順位づけができないという若手社員がいるとします。これは、マインドだけが足りない 場合と、優先順位をつける考え方自体を持 ち合わせていない場合があります。これは基礎力と言えるのですが、こうした 「基礎力」を職場で学ぶ機会がない…という実態がどうも存在しそうです。

これを逆に言うと、なぜ「基礎力」が低下したかという問題に突き当たります。このことは実は、職場における「学びの場」 としての機能不全と深くつながっていると思います。
■結局は放置されている若手社員
基礎力はそれだけを取り出して、例えば筋力トレーニングのように、それだけを鍛え上げることはできません。基礎力は つねに日常の働いている職場で、一度し か起きない出来事、「文脈」の中で学んでいくことになります。こういう対応を したら、成功した・失敗したという連続からの学びです。些細な経験の積み重ね と周囲からのフィードバック、アドバイス から、人は基礎力を学んでいきます。

しかし、現在の職場がこうした基礎力を若手社員が学ぶ環境に適しているかというと、先ほど申したとおり、 とても適切な環境とは言えません。

即戦力と言われて入社したもの雑務の仕事しかない若手社員。いきなり先輩・上司のフォローなく、大きな仕事で精神的 な負担ばかりが大きい若手社員。どちらのケースもよく聞きますが、共通しているのは、彼ら若手社員は、「実際には 職場で放置されている」ということです。
■学びの場としての職場のリデザイン
こうした実態のなかで、学びの場としての職場をどうリデザインするか。

例えば、その経験に裏付けられた行動・思考性は部下たちにとって参考にならないのでしょうか。あなたが成長した 要因は何ですか? と聞くと、多くの答えが「困難な仕事の経験と出会った上司」を上げることが多いと、キャリアの 専門家から聞いたことがあります。実際に私自身も同じように 大きく影響を受けた上司がいます。

部下は上司の姿勢や行動から、確実に何かを学びとります。

例えば、何度もチャレンジし、破れないと思われた壁を突破する上司の姿。会社を良くしようと周囲に働き掛ける上司。 部下の成長を中長期視点で見守り、育成しようとする上司、関係部署と協働して解決策を出していく上司…。

身近な上司が、こうした「周囲に惑わされず、自分の信念を持った」姿勢・行動をどれほど日常の職場で見せられるか、 ここがひとつのヒントになりそうです。

上司のこうした姿勢があって、部下も、この上司の言うことならば…と学ぶ姿勢を持つのだと思います。 コミュニケーション力、コーチング、これらのスキルで解 決することもありますが、そもそも、人間として尊敬できる 上司でなかったら…。上司の行動変容による職場での影響はとても大きいはずです。

そのためには上司自身も変わっていかなくてはいけません。内省する機会を持ち、視野を会社だけではなく、社会全体 に広げて自分自身の役割と生きがいを一致させるをマインドセットが必要になるでしょう。そして、最後は職場で 「新たな行動をする」ということが重要です。行動することによって、初めて、部下たち に大きな影響を与え、職場の 文化が変わっていくのです。
■最後に
人材開発の現場として考えなくてはいけないことは、階 層ごとに箱物だけを考えたり、Off‐JTありきではなく、日常の 職場がどうあるべきか、ということからスタートしたほうが良さそうです。
なぜなら、人は Off‐JTで気づきやスキルを得ることは可能ですが、
実際に使ってみて、自分のものとして定着させていくのは実際の職場でしかありませんから。

若手社員の周辺で起きていることを若手社員だけで解決しようとしないこと。ミドルの周辺で起きている問題をミドル だけで解決しようとしないこと。

ミドルの立場で見ると、上司である部長もいて、現場には部下がいます。
ミドルを中心とした打ち手を考えながらも、 常にこうした上下の階層との接点をどうリデザインしていくか。
つまりOff‐JTと日常の職場の交流をどう設計するか。

この視点から人材開発を考えていくことが、一見遠回りに見えますが、「人が育つ組織」、「学びの場としての職場」の リデザインにつながる近道と思います。

以上


上村 健作(組織開発コンサルタント)

大学院修了後、政府系企業に入社。約2年間に渡り中高年の社員60名を直接リードする、「本当に1人1人と向き合った」 現場改革の遂行を経験する。IWNCでは、メーカー・サービス業問わず、主にドメスティク企業における企業変革 プロジェクトを担当。シニア・ミドルマネジメントを中心としたチームで直面するビジネス課題を、「組織学習」を 通じて解決していく手法を中心に組織文化 変容を支援している。

社員1万人の企業と数十名のオーナー企業というマネジメントスタイルの全く異なる企業で働いた経験から、 「経営と現場 が本音で向き合い、本気で協働する組織は強い」を信条に日々奔走している。また最近は写真家・建築士 ・大学教員・PTA役員といった企業外で活躍する人々 とのネットワークも持ち、「企業や社会をより良い方向へ導こう とする人たちのエンジンって、いったい何?」が気になるテーマ。
弊社コンサルタント上村健作、石川隆久が、日本人材ニュースに対し取材協力。
取材協力させていただいた特集記事は、日本人材ニュース内にて掲載されております。
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